【Editorコメント】「環境省外来種リスト」改訂におけるイエネコ問題について 2026/08/16
1.環境省の本来の改訂意図
適正に飼育されているイエネコを安易に屋外へ出したり、遺棄したりすることを防ぎ、国民に適正飼養を促すことが、今回の改訂の重要な意図だったと思います。すなわち、「外にいるイエネコ」を防除推進外来種として位置づけることによって、完全室内飼育、適正飼養、遺棄防止、そして屋外にいる個体への対策を一体的に進め,イエネコ問題の解決に一歩前進をはかることが想定されていたと思います。
従来のリストでは、「イエネコ」という種名のもとで、主として「ノネコ(野生化したイエネコ)」が対象とされていました。しかし、外来種による生態系への影響という観点からみれば、問題となるのはノネコだけではありません。屋外を自由に徘徊するイエネコには、ノネコだけでなく、飼い主のいないノラネコや、飼い猫であっても屋外に出ている個体が含まれます。
これらの屋外イエネコは、在来野生動物の捕食、感染症や寄生虫の媒介、交通事故など、野生動物、人の生活、そしてイエネコ自身に関わるさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
したがって、問題の本質は「ノネコだけを対象とすること」ではなく、「屋外にいるイエネコ」という状態そのものを減らし、最終的にゼロにすることにあります。
2.一部の批判派による「すり替え・論点の歪曲」
ところが、一部の批判派は、今回の改訂の趣旨を「屋外の猫が安易に捕獲・排除・殺処分される」という問題へとすり替えたデマで,署名活動や批判キャンペーンを展開しました。
一般の飼い主や動物愛護に関心をもつ人々の間に、「飼い猫が外に出ただけで、直ちに国によって捕獲・殺処分される」といった過剰な不安や誤解が生じることになったと思います.
署名活動やロビー活動(ロビング),一部報道のスクープ活動なども行われ,環境省原案を撤回せざるを得ない状況になりました.
しかし、本来の改訂の趣旨は、適正に飼育されている飼い猫を一律に捕獲・排除することではないはずです.屋外への遺棄や無責任な放し飼いを防ぎ、完全室内飼育などの適正飼養を促進するとともに、すでに屋外にいるイエネコについて適切な対策を進めることにあるはずです.
したがって、政策の趣旨と実際の制度内容を区別し、何が事実で、何がデマや誇張なのかを冷静に理解して行動すべきと思います.
3.イヌやイエネコを外来種対策・関連制度から一律に除外することのリスク
一部では、外来種リストからイヌやイエネコを除外することや、関連する法制度の対象から外すことを求める主張もみられます。
しかし、家畜でありペットのイヌやイエネコは人間の生活に身近な動物である一方、屋外に放置・遺棄された個体については、生態系への影響だけでなく、公衆衛生や動物福祉の観点からも適切な管理が必要です。
例えば、イヌについては狂犬病予防法に基づく感染症対策が行われています。また、イエネコについても、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)やトキソプラズマ症など、人と動物の間で問題となり得る感染症について、適切なリスク管理が求められます。
したがって、イヌやイエネコをその特性やリスクを考慮せず、外来種対策や関連する制度から一律に除外することは、生態系保全、公衆衛生、動物福祉のいずれの面からも,無責任な提案です.問題のすり替え・論点の歪曲によるデマキャンペーンと言えます.
4.どう対処すべきか
1)イエネコの命だけでなく、人間の命と健康も大切にする
屋外にいるイエネコを放置することは、動物福祉の問題にとどまらず、公衆衛生上の問題にもなります。
イエネコは、SFTSなどの感染症に感染したり、病原体を保有するマダニを運んだりする可能性があります。人への感染リスクを考えれば、屋外を自由に徘徊するイエネコを無制限に放置することは適切ではありません。
また、公園や住宅地など、人の生活圏に屋外イエネコが存在することは、子ども、妊婦、高齢者などを含む住民の不安や感染リスクにもつながります。
したがって、イエネコの命を守ることと、人間の命と健康を守ることを対立させるのではなく、「人と猫の双方を守る」ための対策を考える必要があります。
2)批判的な主張や情報に惑わされず、事実確認と正しい行動を
イエネコ問題をめぐっては、事実関係が十分に確認されないまま、問題の一部だけを強調したり、別の問題に論点をすり替えたりしたデマによる主張がみられます。
また、署名や寄付を募る活動についても、その主張が科学的根拠や客観的事実に基づいているのか、活動によって本当に問題の解決につながるのかを冷静に考え対処する必要があります。
重要なのは、誰が何を主張しているかではなく、その情報が科学的根拠と客観的事実に基づいているかを確認することです。
「かわいい」「かわいそう」という感情だけで判断するのではなく、生物多様性、公衆衛生、動物福祉,そして飼主やネコを愛する方々,それぞれの観点から、情報をファクトチェック(事実検証)して,正しく判断したいものです.
「マッチポンプ的活動」(すり替えデマと誹謗中傷で炎上させ,一方で消火すると見せかけた独善的提案,そして利益誘導)を行なう批判者もいます。安易に署名や寄付をするのではなく、まず情報の真偽を確認し,正しい行動を取ってほしいものです.
3)真の動物愛護とは何か
屋外で生活するイエネコは、交通事故、感染症、マダニ、他の動物との争い、飢え、暑さや寒さなど、さまざまな危険にさらされています。屋外生活は、イエネコ自身にとっても決して安全な環境ではありません。
不妊・去勢手術を行ったうえで再び屋外に戻すTNR(Trap-Neuter-Return)は、イエネコ対策で使われる場合がありますが,それだけでイエネコが抱える交通事故、感染症、捕食などのリスクをなくすことはできません。
動物愛護とは、イエネコを単に屋外で生き続けさせることではなく、家畜・ペットであるイエネコを本来どおり、危険な屋外環境から守り、屋内で適正に飼育することです。
そのためには、飼い主の責任として、「完全室内飼育」を徹底し、飼い主のいない屋外イエネコについても、保護・収容、不妊・去勢、譲渡、人道的致死処分などを組み合わせながら、最終的に「外にいるイエネコをゼロにする」ことを目指すべきです。
これは,イエネコの命を軽視する考え方ではありません。むしろ、イエネコ自身の命と健康を守りながら、在来野生動物、人の健康、地域の生態系、そして地域社会を守るための、責任ある対策です。
イエネコの習性や生態を正しく理解し、適切な飼い方を知ってほしいと思います。「イエネコがいなくなると、イエネズミ(外来種のネズミ)が増える」という意見があります。しかし、イエネズミも餌や生息環境がなければ増え続けることはできず、餌資源が減れば、やがて個体数は減少していきます。イエネコを外に放すことを、ネズミの防除という理由で正当化することは適切ではありません。
家畜・ペットであるイエネコを室内で適切に飼育し、屋外で自由に徘徊させないことは、イエネコを守ることにもつながります。お家の中で,人とイエネコがいつも寄り添って生活を送れることが,真の動物愛護であるはずです。
以上です.