【論文】ネコが最低でも年間で3万5千羽のオオミズナギドリを捕食
—世界最大の集団繁殖地、御蔵島における野生化ネコによる大量捕食の実態が明らかに—
2025年7月8日
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
公益財団法⼈ 山階鳥類研究所
https://www.ffpri.go.jp/press/2025/20250708/index.html
論文
タイトル:Unexpectedly early and drastic dietary shift of feral cats to seabirds: evidence from fecal samples of cats captured during the transition to the breeding season of the streaked shearwater on Mikura-shima Island, Japan
想定外に早くかつ急激な野生化ネコの海鳥への食性シフト:御蔵島におけるオオミズナギドリの繁殖シーズン移行期に捕獲されたネコの糞分析からのエビデンス
著者:Yuya Watari, Yuki Matsuyama, Mikuni Tokuyoshi, Tsugumi Nose, Hayama Hisayo, Kazuto Kawakami, Nariko Oka
掲載誌:Mammal Study、2025年4月23日 オンライン公開
論文URL:https://doi.org/10.3106/ms2024-0041(外部サイトへリンク)【オープンアクセス、日本語要旨付き
ポイント
- 御蔵島に野生化しているネコの冬季の食性を調べたところ、従来の調査によるオオミズナギドリの帰島記録より5週間早く、ネコがオオミズナギドリを捕食し始めていることが判明しました。
- この新知見に基づき、御蔵島でのネコ1頭あたりの年間オオミズナギドリ捕食数が330羽と推定されました。
- 現在実施中のネコの生息状況調査に基づき、御蔵島全域でのネコのオオミズナギドリ年間捕食数は最低でも34,980羽にのぼると算定されました。
「ネコ」が「生態系」におよぼす影響とは #エキスパートトピ
石田雅彦 科学ジャーナリスト
8/8(金) 17:43
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/05bddc92c0f4105e2febd3f08dab8de65879fedcエキスパートの補足・見解
ネコからヒトへ感染する危険性のある人獣共通感染症には、ネコひっかき病、パスツレラ症、トキソプラズマ症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症などがあり、死亡する例がある感染症もあります。
外へ出たネコが、野生生物に感染症を伝染させるリスクもあります。ネコの獲物にはコウモリやネズミなどの人獣共通感染症を媒介したり、ウイルスなどの病原体をプールしている生物がいます。外から持ち込まれたダニやノミなどを完全に防ぐことは難しいですが、こうした病原体の循環は、種間で感染する能力を持った変異を引き起こし、新たな人獣感染症が発生することにつながりかねません。
外へ出る飼いネコ、野良ネコは生態系を脅かします。ネコが交通事故にあう危険性もあるでしょう。生態系を守り、ネコと飼い主の安全を守るためにも飼い主が責任をもち、外へ出さないようにし、例えば室内飼いをするべきです。
高タンパク質の肉の含有量が多いエサを与え、よく遊んであげると、外へ出られないことによるネコのストレスを軽減し、もし出てしまっても獲物を捕らえる行動が少なくなるという研究結果もあります。外へ出たがるネコへの対処法として知っておくといいかもしれません。