2023/10/31

【広報】「西表島観光管理計画」の策定について.沖縄県(2023年9月6日)

 

「西表島観光管理計画」の策定について

概要

 西表島における持続可能な観光を実現し、世界遺産委員会からの観光管理に係る要請事項にも対応するため、自然環境・観光関連の専門家等よる検討や地域関係者等との協議を踏まえ、今般、「持続可能な西表島のための来訪者管理基本計画(令和2年1月策定)」を改定し、「西表島観光管理計画(以下、「管理計画」という。)」を策定しました。

策定主体

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産地域連絡会議 西表島部会」

※世界自然遺産地域の保全管理のため、関係行政機関・地域関係団体により構成される地域ごとの会議体(詳細は参考資料1及び参考資料2参照)

検討主体

「西表島の観光管理計画改定のための作業部会」

※西表島の自然環境や観光関連の専門家、観光関連事業者等から構成(詳細は参考資料3参照)

※令和3年10月から令和4年12月にかけて計4回の作業部会を開催

計画のポイント

① 世界自然遺産地域内では、エコツーリズム推進法に基づく立入規制と、竹富町観光案内人条例に基づくガイドの免許制度の2つの法的拘束力を持った規制を行う。

② 西表島全体の入域観光客数については、急激な観光客の増加による影響を最小限に抑えるため、以下の管理基準を設定し、情報発信や誘導的な手法等により管理を行う。
  【年間の管理基準】(基準年:令和元年入域観光客数290,313人)
   ・年間入域観光客数を前年比1割以上増加させない。
   ・年間入域観光客数33万人を上限とする。
  【1日当たりの管理基準】
   ・1日当たり1,200人を上限とする。

③ 観光利用に起因するヤマネコ等のロードキル対策として、道路交通法の遵守を促す取組や普及啓発の強化を図り、今後は入域観光客と交通事故の関係についても分析し、より効果的な対策を検討する。

④ 利用者負担制度(「竹富町訪問税(仮)」)の導入による管理に必要な体制等の強化や、グッドプラクティス選定・支援制度(「エコ認証制度」(仮))の導入によるインセンティブの付与等により、責任ある観光に向けた取組を促すとともに観光による多面的価値の向上につなげる。

⑤ モニタリング評価委員会の設置により、定期的に西表島の観光管理に係るモニタリング指標の確認、評価、対策の検討を行う。

 

2023/10/30

【報道】希少動物のロードキル増加など議論 奄美・沖縄世界自然遺産科学委(南海日日新聞2023/10/28)


希少動物のロードキル増加など議論 奄美・沖縄世界自然遺産科学委

配信

 https://news.yahoo.co.jp/articles/81fdba0fecd4ab74af63da0fc1d902ca2942cf42

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産地域科学委員会(委員長・中島慶二江戸川大学国立公園研究所長、委員12人)の会合が27日、沖縄県那覇市の県青年会館であった。

概要

「モニタリング計画」に基づく遺産地域の保全管理状況に関して、2022年度の評価結果などを共有し議論した。希少動物のロードキル(交通事故死)増加について「地域ごとに因果関係を精査する必要がある」などの意見が出た。

奄美大島、徳之島に関しては「アマミノクロウサギのロードキルが増加傾向」と指摘。さらに「近年、イヌ・ネコによる希少種の捕殺が毎年発生している。奄美大島では飼い猫の不妊去勢手術や室内飼養などが進んでいるが、徳之島では対策強化が必要」などの意見が出た.

(詳細はURL参照)

2023/10/27

【広報・報道】沖縄島北部における生態系保全等のためのネコ管理・共生行動計画の策定公表(2023年10月27日)

沖縄島北部地域(やんばる)のネコ管理計画策定公表

 

【広報】
「沖縄県、国頭村、大宜味村、東村、環境省沖縄奄美自然環境事務所は沖縄県のやんばる地域におけるネコの管理・共生行動計画を策定いたしました」
沖縄県庁 2023年10月27日
https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/2023_neko_action_plan.html
https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/documents/action_plan.pdf

(1) 策定経緯(概要)
在来種捕食,感染症,生態系影響,ロードキル,イエネコの安全健康が必要.

 
令和4年10月に沖縄県と3村より計画案に対する意見を募るため、パブリックコメントを実施しました。その結果、沖縄県には647の個人・団体から1,090件、大宜味村には1件のご意見を頂きました。

そのご意見を踏まえて、沖縄県、国頭村、大宜味村、東村、環境省沖縄奄美自然環境事務所で協議・見直しを行い「ずっとやんばる ずっとうちネコ アクションプラン(沖縄島北部における生態系保全等のためのネコ管理・共生行動計画)」を令和5年10月に策定いたしました。

(2) 計画の目的
本計画は、沖縄島北部の生態系保全、公衆衛生の維持・向上及びネコの安全の確保・健康の維持に寄与するため、関係機関等が連携して森林域からのネコの排除、飼いネコの適正飼養、沖縄島北部以外からのネコの流入の防止等のネコの対策を迅速に進めることで希少種の生息状況の改善を図ることを主な目的としています。

(3) 計画の運用時期
令和6(2024)年1月~令和15(2033)年3月
国頭村、大宜味村、東村の住民に対しては住民説明会を開催する予定です。 

よくあるお問い合わせについて
https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/documents/qa.pdf

パブリックコメントの結果について
https://www.pref.okinawa.jp/site/iken/r4/documents/r5nekoactionplanpubliccomment.pdf

お問い合わせ
環境部自然保護課(代表)
〒900-8570 沖縄県那覇市泉崎1-2-2 行政棟4階(北側)
電話番号:098-866-2243
FAX番号:098-866-2855


【報道
「森林域にいるネコをゼロへ 沖縄県や3村が管理計画 動物愛護団体の意見を受け精査」
沖縄タイムス2023/10/27(金) 17:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/3fadc03eeba07990ff814947d5670ab0df8100c8

(概要)
沖縄県と国頭、大宜味、東の3村、環境省沖縄奄美自然環境事務所の5者は2023年10月27日、沖縄本島北部の生態系の保全などを目的としたネコ管理・共生行動計画を策定したと発表。2024年1月から33年3月まで、森林域にいるネコをゼロにすることなどをめざす。

同計画については、捕獲されたネコの殺処分を懸念する動物愛護団体などからパブリックコメントが多く寄せられたため、今年の4月から開始する予定を見送り、5者で計画を精査。

県環境部自然保護課の担当者は「捕獲した猫は譲渡に取り組む」と強調。「新しい家族として引き取りに協力していただくようお願いしたい」と呼びかけた。

(詳細は本文参照)

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コメントは現在2件

 【報道

「ネコが希少種を傷つけたデータはあるのか」と愛護団体 殺処分に懸念が集中 沖縄県の外ネコゼロ計画に意見1090件

 沖縄タイムス配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/e6c3b3313e47d34d68fac1fdddb5805862a65988

(概要)

計画へのパブリックコメントには647の個人・団体から1090件の意見が寄せられ、最も多かったのが、イエネコの殺処分への懸念。計画は殺処分を前提としないと強調しているが、けがや病気、長期間譲渡先が見つからない場合などは例外の可能性がある。5者は年内に住民説明会を開き、理解を求める方針だ。NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長は、「3村や県などが,これまでに対策してきたことを,連携して集中的に取り組むことに意義がある」、「世界自然遺産に登録され、国や県はやんばる地域の生態系保全を約束した。自然環境にとっても、人やイエネコの福祉の観点からも、すべてのイエネコが室内飼育されることは必要」と述べた。計画に反対する2023年3月に「全島島猫会議」を設立して,計画撤回の署名活動など実施という.

 (詳細はURLを見てください)

 

 【報道

沖縄県が「捨てネコ防止」「やんばる保全」で行動計画を公表 パブコメは1000件超

配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/6ba6559d68d69e9cb3a32b9a3a24bb34d65477da

(概要)

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森林域では、自動撮影カメラで継続的にネコが撮影され、マングース北上防止柵が設置されている大宜味村塩屋から東村福地にかけての「SFライン」以北では2021年度に82頭、22年度に47頭が確認された。 

 計画では、(1)森林域でネコが確認されなくなること(2)北部の全ての飼いネコが適正飼養され、飼い主不明ネコがいなくなること(3)北部以外からネコが流入しない状態とすること―の三つを目標としている。 

 目標達成に向け、ネコの生息状況のモニタリングや捕獲、不妊去勢手術率向上など3村のネコ飼養条例による飼いネコ管理、捨てネコ防止のため教育現場の普及啓発や警察との連携に取り組む。

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 (詳細はURLを見てください)

 

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コメント by chair

・ようやくこれで,世界自然遺産登録地の4島のうち,奄美大島と沖縄島北部において,「外ネコ(イエネコ)ゼロ」対策計画が策定されたことになります.西表島では「外ネコ(イエネコ)ゼロ」はすでに達成済みです.

・野外で捕獲されるイエネコの数を減らしゼロにするためにも,きちんとした対策と,飼育者は適正飼養と完全室内飼養が必要です

・ペットとしてイエネコを完全室内飼養することは,貴重な生態系にとっても,イエネコにとっても,幸せなことです.

・ペットを飼うということは,飼い主としての大きな責任が伴うことを自覚すべきと思います.

・人とイエネコのこれまでの付き合い方を変えるだけで,生態系にも,ご近所付き合いでも問題解決に向かうはずです.これは,沖縄島北部地域(やんばる)だけでなく,日本国中や世界中のどこの地域でも同じことです.
 
・外ネコ(イエネコ)対策は,先行する奄美大島では在来種回復が認められ,徳之島でも認められています.一方,深刻な問題として,生態系がトキソプラズマで汚染されていることも明らかになってきています.
 
外ネコ(イエネコ)問題に対して,「動物愛護管理法」や各地域の「ネコ条例」を理解し遵守し,外ネコ(イエネコ)問題の解決に向けた活動にしたいものです.

 

2023/10/01

【論文・報道】人口密度が高いほど増えるネコ、人獣共通「トキソプラズマ症」の拡大リスクに

【原著論文】

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0286808

Sophie Zhu, Elizabeth VanWormer, and Karen Shapiro (2023). More people, more cats, more parasites: Human population density and temperature variation predict prevalence of Toxoplasma gondii oocyst shedding in free-ranging domestic and wild felids, PLoS ONE 18(6):e0286808 | doi:10.1371/journal.pone.0286808


【報道】

人口密度が高いほど増えるネコ、人獣共通「トキソプラズマ症」の拡大リスクに

2023.07.05 GrrlScientist | Contributor  

https://forbesjapan.com/articles/detail/64307

 

概要(以下にやや簡略しましたので,詳細は上記URLをご覧ください)

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自由に生活するイエネコや、野良ネコ(飼い主はいないが、人からエサをもらうネコ)および野生化した「ノネコ」は、都市など人口密度の高い地域に集まる傾向にあり、トキソプラズマ症を引き起こす寄生虫がより多く排出される可能性があることが、新たな研究でわかった。この研究では「日内平均気温の変動」と寄生虫排出量に正の相関があることも明らかになった。

トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)という寄生虫は、あらゆる場所に存在し、ヒトを含むさまざまな温血性脊椎動物の筋組織や脳組織に感染する。ヒトでは、通常は免疫系により抑え込まれる(不顕性感染)ため大きな問題とはなりにくく、感染者のほとんどは自覚症状がない。しかし、免疫不全の状態では、重篤な状態にもなり得る。また、特に妊娠初期に初感染した場合、胎児が重篤な障害を負うことがある。

トキソプラズマ原虫が感染すると、軽度なものから深刻なものまで、多様な症状を引き起こす場合がある。インフルエンザに似た症状、リンパ節の腫れや痛み、重い眼疾患に加え、免疫機能が低下している患者では重篤な脳症に至ることもある。まれなケースだが、トキソプラズマ原虫が肺に侵入し、重篤な呼吸器疾患を発症した例も知られる。

イエネコを含むネコ科の動物は、トキソプラズマ原虫の終宿主(しゅうしゅくしゅ:成体が寄生する最後の宿主)だ。原虫は、ネコ科動物の体内で有性生殖し、生活環を完結させて、オーシストと呼ばれる、頑強で環境変化に耐性をもつ個体(一種の受精卵)を大量につくりだす。ネコは、糞便を介して、環境中にこれらのオーシストを排出する。


ヒトは、寄生虫卵に汚染されたネコの糞や、糞で汚染された食品などを口に入れることにより感染するほか、中間宿主(幼生が寄生する宿主)として汚染された豚肉や鶏肉などを、生または調理不十分なまま食べることでも感染が生じる。

トキソプラズマに関するこれまでの研究は、おおむね家庭で飼育されるイエネコによる原虫の排出に注目しており、自由に生活するイエネコ、野良ネコあるいはノネコの研究はあまり進んでいない。加えて、自由に生活するネコ科動物によるオーシストの排出に、気候変動や、環境汚染の主要因である人間活動がどのような影響を与えるかについては、ほとんど検討されてこなかった

カリフォルニア大学デイヴィス校の博士課程に在籍するソフィー・チューらは、こうした知見の乏しいテーマに注目し、先行研究で収集されたデータに一歩踏み込んだ解析を行なった。

「Plos One」に2023年6月21日付で発表された論文において、チューらの研究チームは、自由に生活するネコによるトキソプラズマ原虫のオーシスト排出について、生態学的および疫学的側面を検討し、各種哺乳類への感染拡大リスクを分析した。

チューらは、6種の中型から大型の野生ネコ(ピューマやボブキャットなど)および、自由に生活するイエネコや、飼い主のいない野良ネコ、ヒトに給餌されている屋外生活するネコ、ヒトに給餌されていない「野生化」したノネコ)を対象とした、47の既存研究のデータの再解析を行なった.

(略) 

トキソプラズマ原虫のオーシスト排出と最も顕著な関連がみられた要因は、人口密度の高さだった。また、温度も重要な要因であることが明らかになった。

具体的には、日内平均気温の変動が大きいほど、オーシスト排出量が(特にイエネコにおいて)多くなっていた。その一方で、乾季の周辺温度が高いほど、野生のネコ科動物によるオーシスト排出量は減少することがわかった。

関連が疑われたその他の要因(年間降水量や年間平均気温など)については、オーシスト排出量との相関は見られなかった。

(略)

イエネコの生息密度については、世界規模の推定が行われていないため、この研究では、人口密度を代替指標とした。人口密度が高く、人間活動が活発な地域ほど、捨てられる飼いネコ、外飼いネコ、脱走した飼いネコが多く、また野良ネコのコロニーへの給餌量も多いと考えられる。

もう1つ考慮すべき要因は、都市化が進み人間活動が活発になった地域では、人獣共通感染症が増える方向で周辺環境が変化する可能性があることだ(参照)。こうした複合的な要因から、自由に生活するイエネコの個体数が増加すると、環境中へのオーシスト排出が促進され、トキソプラズマ原虫の疫学的特性と感染パターンが変化するおそれがある。

今回の新たな知見と、既存の研究で提示されたデータを合わせて考えると、人口密度の上昇と、気温変動の不安定化によって、トキソプラズマ原虫だけでなく、その他の感染症の蔓延を招きかねない環境条件が揃うおそれがある。

政策決定者らは、今回の研究結果に基づき、トキソプラズマ原虫の感染を抑制するため、野良ネコの個体数管理に重点的に取り組むべきだとチューらは提言している。

(略)

以上