2022/01/27

環境省「2021年奄美大島・徳之島における希少哺乳類の死因解明について」

沖縄奄美自然環境事務所 報道発表資料 2022年01月27

 

環境省では、希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体の情報を収集し、データの整理・分析を行っています。アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、ケナガネズミについて2021年の死体確認件数・死因内訳を整理したところ、アマミノクロウサギの交通事故件数について、奄美大島では昨年の過去最多を上回る件数を記録し、徳之島では過去2番目に多い件数を記録しました。さらに、両島においてイヌやネコによるものと思われる希少種の捕殺事例が確認されました。多くの方に夜間の運転には十分注意していただくと共にペットの飼養に当たっては管理を徹底していただく必要があることからお知らせ致します。

 

1.2021年に回収された死体の死因内訳
 2021年に回収されたアマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、ケナガネズミの死体確認件数と死因内訳を整理しました(図1)。アマミノクロウサギの死体確認数は174件(奄美大島と徳之島の合計)となり、過去最多となりました。


<図1>奄美大島と徳之島において回収された希少種の死因内訳(2021年)


-1.アマミノクロウサギ交通事故件数の増加について
2021年の交通事故の確認件数は、奄美大島では過去最多の59件(死体55件、救護のち死亡1件、救護のち放獣2件、治療中1件)、徳之島では過去2番目に多い17件(すべて死体)でした(図2、3)。
・奄美大島では、アマミノクロウサギの交通事故による死亡件数(56件)が2020年の過去最多(50件)を上回りました。これまでの事故多発道路上での事故が増加しています。
・徳之島では、アマミノクロウサギの分布の辺縁部やこれまで生息が確認されていなかった場所での事故が増加しています。
・近年、事故の増加が顕著に多い車道は、奄美大島では、瀬戸内町道網野子峠線、宇検村と瀬戸内町をつなぐ県道85号線、県道612号線(役勝~篠川間)大和村・宇検村周辺の県道79号線、徳之島では県道618号線(松原~轟木間)、県道629号線(手々~金見間)などです。

 


<図2>奄美大島におけるアマミノクロウサギの交通事故発生状況
<図3>徳之島におけるアマミノクロウサギの交通事故発生状況


-2.交通事故防止の対策と協力のお願い
・アマミノクロウサギだけでなく、ケナガネズミやトゲネズミ等希少野生動物の交通事故も近年確認されています。交通事故は林道のみならず、スピードの出やすい国道・県道上でも発生しています。交通事故が多発している地点には、下写真のような警戒標識などが設置されています。動物が活動する夜間は、特に標識設置場所では注意し、野生動物が急に飛び出してきてもすぐに止まれる速度まで減速していただくようお願いします。

 

<注意看板写真>

 

・昨年はアマミノクロウサギの交通事故対策として、徳之島町による第二麦田橋周辺への侵入防止ネット設置、天城町による県道618号線(松原側)への侵入防止ネット設置、大和村と大和建友会による村道マテリヤ線への侵入防止ネット設置が行われたほか、奄美市道三太郎線および周辺道路におけるナイトツアーの試行ルールが運用開始されています。設置および開始以降現在まで、当該路線における交通事故と判明した死体は0件でした。
・環境省ではリーフレット配布等による各種普及啓発活動や注意看板の設置等を今後も引き続き実施し、関係機関と連携して対策を進めていく方針です。


-1.イヌやネコによる捕殺事例の確認について
2021年は奄美大島ではアマミノクロウサギ13件、ケナガネズミ8件、アマミトゲネズミ1件、徳之島ではアマミノクロウサギ10件、ケナガネズミ1件、トクノシマトゲネズミ8件がイヌやネコによる捕殺死体として確認されました。
・奄美大島では、集落内でケナガネズミやアマミノクロウサギの捕殺死体がいくつか回収されました。(2021年4月7日発表ほか)。
・徳之島では、北部の林道においてネコによる捕殺と思われるトクノシマトゲネズミ7個体の死亡が確認されました(20211223日発表)。
・イヌやネコによる捕殺の確認数は、死体回収や判定の難しさから、必ずしも捕殺の多寡を示すものではありません。実際の捕殺頭数を部分的に示したものであることにご留意下さい。
-2.ノネコ対策へのご理解ご協力およびペットの適正飼養のお願い
・現在、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を行っています。捕獲されたノネコの糞からは、多くの希少種が検出されています。また、センサーカメラによるモニタリングでも、希少種を咥えたノネコが多数確認されています。希少種保全のため、事業へのご理解とご協力をお願いいたします。

<自動撮影カメラ写真>


・犬や猫を飼うときは、狂犬病予防法や各市町村の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例に基づいて、必ずお住まいの市町村役場で登録を行ってください。また、マイクロチップを装着して所有者明示をすること、不妊・去勢手術をしてみだりに増えないようにすること、放し飼いや遺棄をしないこと等を守っていただくようお願いします。世界自然遺産に登録された奄美大島や徳之島の生態系を守るため、ご協力をお願いします。
*死因について
死体の状態や発見現場、死体解剖の結果から推測しています。死体確認件数は情報が寄せられ把握ができた数であり、自然界での実際の死亡頭数とは異なります。また、死体は人目に付きやすい道路上で発見されるものが多いため、交通事故による死体が多く発見される傾向にあります。死体の腐敗や劣化が激しい、死体の一部のみが回収された、剖検をしても異常所見が認められなかったなどの理由で死因が特定できなかったものは、不明としています。


4.情報提供のお願い
 環境省奄美野生生物保護センター、徳之島管理官事務所ではアマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めています。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら下記連絡先までご連絡ください。ケガであれば、早めの対応によって動物が助かる可能性が高まります。
 傷病鳥獣や事故の情報は、今後の交通事故防止や希少種の保全策に活用します。
本発表においてご不明点等ありましたら、以下、宛先までご連絡ください。


問い合わせ先

環境省沖縄奄美自然環境事務所

奄美群島国立公園管理事務所(電話:0997-55-8620

徳之島管理官事務所(電話:0997-85-2919

2021年度鹿児島県奄美大島・徳之島クロウサギ交通事故過去最多73件、前年の66件上回る 環境省まとめ 夜間運転の注意を

奄美新聞社202212711:40

(概要)環境省(奄美群島国立公園管理事務所)は26日、奄美大島と徳之島のみに生息する国の特別天然記念物アマミノクロウサギの交通事故が、2021年は過去最多だった前年の66件を上回る73件(奄美大島・徳之島合計)になったと発表した。同年7月に世界自然遺産登録となった両島に対し、同事務所は昨年に引き続き、動物が活動する夜間の運転に十分注意するよう改めて呼び掛けている。(以下略)

 

「アマミノクロウサギ、交通事故死が過去最多

 2021年は73件 世界自然遺産の奄美大島・徳之島」

南日本新聞社.2022012621:05

 

「クロウサギ事故死、最多 鹿児島・奄美と徳之島」

共同通信社.2022012617:22