【報道】奄美大島のマングース根絶、「無謀」な事業をどう成し遂げたのか
多難だった道のりと外来生物問題のこれから、2人のキーパーソンに聞いた
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/25/012200038/?ST=m_news
NATIONAL GEOGRAPHIC 2025.01.26
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以下は概要(質問と主な回答,詳細はURLを見てください)
はじめに
2024年9月3日、東シナ海に浮かぶ鹿児島県奄美大島において、生態系に大きな被害をもたらしたフイリマングース(以下「マングース」)の根絶が宣言された。外来種の根絶事例は世界にいくつか存在するがいずれも小規模で、東京23区よりも広い奄美大島全島級は世界初だといわれる。猛毒のハブ駆除のためにわずか30頭程度のマングースが放たれてから、実に45年目の出来事。根絶に至るまでの多難な道のり、そして外来生物問題のこれからを2人のキーパーソンに語ってもらった。
「早くやめたら?」と言われ続けた(阿部愼太郎さん・環境省 奄美群島国立公園管理事務所)
質問
―阿部さんがマングース防除に取り組んだきっかけを教えてください。
―防除事業が始まった当時の反応はどのようなものだったのでしょう。
―そんな中、防除はどのように進められたのでしょう。
―世界で類を見ない成功を実現した今の気持ちを教えてください。
―今後の課題は。
答え
マングースの防除が進むにつれ、在来生物の数が回復している実感があります。ただ回復によって、在来種が交通事故に遭うケースも増えています。加えて、アマミノクロウサギによる農業被害なども増加しました。今後は在来種の保護に努めつつも、畑に入り込まないよう対策を施すなど、在来種との棲み分けを含めて共生のあり方をきちんと考えていかなければなりません。
取材者コメント
最後に問題提起として。マングースバスターズや探索犬は、訓練を積んだ外来種対策のプロたちです。にもかかわらず、防除事業が終わって給料を支払う財源がなくなったからといって解散してしまうのは、少し違う気がしています。県や市町村にも協力を求めて、1人でも多くのスタッフがプロとして次のステップに進めるような仕組みを考えていきたいですね。
2つの評価手法を「ゼロ」の根拠に(深澤圭太さん・国立環境研究所)
質問
―深澤さんはマングース防除事業への関わりが長いと伺いました。
―確信を得るに至ったエピソードがあれば教えてください。
―根絶宣言の背景にある、根絶確率はどのように導き出したものなのでしょう。
答え
マングースの生存は、2018年度に捕獲された1頭を最後に確認されていません。その後も約6年間、活動を続けながらゼロを積み上げた結果、根絶確率が十分に高まったと判断し根絶宣言に至りました。
―生存数がゼロになったとの判断が社会的になされて、根絶宣言が出されたわけですね。一方で、科学的に見ると確率がゼロになったわけではありません。
―それでも根絶宣言を出すに至りました。
―全国各地で外来種の問題が後を絶ちません。今回得られた教訓は他でどう生かせますか。
答え
マングースバスターズもマングースが嫌いなわけでは決してありませんし、わなを仕掛ければどうしても在来生物を混獲してしまいます。そういった意味で、実は心理的コストの非常に大きな事業でした。負担を軽減するには、なるべく短期間で終わらせることが望ましい。そのためには人も予算も集中的に投じる必要があるでしょう。
外来生物の防除は、必要があってやっていることです。私たちの事業でも、「外来種だから」という理由だけで取り組んでいる人はいません。必要性の判断根拠として重要になるのは、在来種や人間社会に与える影響です。例えば房総半島を中心に大きな問題となっている小型のシカ「キョン」による、在来植物への食害は非常に深刻だといわれていますよね。そういった悪影響についてしっかりと説明や対話を重ねていくことが、外来種対応においては重要だと今回の事業を通じて学ぶことができました。
以上です.