【報道】 オズウイルス 茨城県内女性死亡 世界初 マダニ媒介か
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【広報】オズウイルス感染症と診断された患者の発生について(茨城県庁)
更新日:2023年6月23日
https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/eiken/kikaku/oz_virus.html
2022年初夏に心筋炎で亡くなられた患者について、茨城県衛生研究所及び国立感染症研究所の検査の結果、初めてオズウイルス(Oz virus)感染症と診断されました。
オズウイルスは2018年に国内のマダニから分離同定され、ヒトでは狩猟者において血清抗体陽性者の報告があり感染の可能性が示唆されていたものの、発症・死亡事例は確認されていませんでした。
春から秋にかけてはマダニの活動が盛んになるため、刺咬される危険性が高まる時期となります。例年全国的にマダニが媒介する日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)等の報告数が多く、オズウイルスも感染マダニの刺咬によりヒトに感染する可能性が考えられることから、主に屋外の活動時にはマダニに刺されないよう注意が必要です。
*オズウイルスを媒介すると考えられるマダニは、主に関東以西に分布しており、オズウイルスの感染歴があると考えられる野生動物が千葉県、岐阜県、三重県、和歌山県、山口県、大分県で確認されております。
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資料提供
令和5年6月23日 (金)
照会先:保健医療部感染症対策課 疫学G
担当者:課長補佐 大芦
連絡先:029-301-3233(内線:3280)
オズウイルスによる心筋炎と診断された患者の報告について
今般、2022 年初夏に心筋炎で亡くなられた患者について、茨城県衛生研究所及び国立感染症研究所の検査の結果、オズウイルス(Oz virus)による心筋炎と診断されました(別添)。
オズウイルスは、2018 年に国内のマダニから初めて分離・同定され、野生動物(ニホンザル、イノシシ、シカ)の血清抗体調査によって国内での広い分布が予測されていましたが、世界的にヒトでの発症や死亡事例が確認されていなかったウイルスです。オズウイルスのヒトへの感染経路について、現時点で確立された知見は得られていませんが、これまで、ヒトを刺咬するマダニから同ウイルスが検出されており、感染マダニの刺咬により感染する可能性が考えられています。
マダニは、日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)等の感染症を媒介することが知られており、マダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まることから、特に注意が必要なため、県民への注意喚起をお願いいたします。
【患者の概要】
1 年 代 等:70 歳代(女性)、茨城県在住
2 症 状:発熱、倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛
3 経 過 等:
2022 年初夏 症状が出現し、医療機関を受診。
肺炎の疑いで抗生剤を処方されて自宅療養していたが、症状が悪化したため、再度医療機関を受診し、他院に転院。
入院時 右鼠径部にマダニの咬着を確認。ダニ媒介感染症の疑いで入院加療。
入院後 検査では、リケッチア感染症及び SFTS は否定。心筋炎が疑われ、治療継続。
入院 20 日目 意識障害出現。多発脳梗塞があり、抗凝固療法を開始。
入院 26 日目 死亡。
死亡後 医療機関において病理解剖実施。
茨城県衛生研究所において、入院時の検体を検査したところ、オズウイルス遺
伝子を検出。
国立感染症研究所の検査をうけ、オズウイルス感染症と診断。
患者及び患者家族等の個人情報については、プライバシー保護の観点から本人等が特定されることのないよう、格段の御配意をお願いいたします。
タカサゴキララマダニ(吸血前:約7mm) タカサゴキララマダニ(吸血後:20mm 以上)
【写真:国立感染症研究所提供】
(別添)国立感染症研究所発行資料
1.病原微生物検出情報(IASR)速報 初めて診断されたオズウイルス感染症患者
2.オズウイルス感染症とは
3.オズウイルス感染症に関する Q&A
○ オズウイルス感染症とは
オズウイルスは、2013 年に愛媛県で採取されたタカサゴキララマダニから、2018 年に初めて分離・同定されました。これまで、世界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていませんでした。
オズウイルス感染による症例報告は今回の1例のみであり、オズウイルス感染による臨床症状に関する確立された知見は得られていません。血清抗体調査により過去の感染が示唆された事例の報告があり、感染が必ずしも致死的な経過につながるわけではないと考えられていますが、臨床症状の特徴の解明のためには、さらなる症例の情報の集積が必要です。現時点では、有効な治療薬に関する知見はなく、治療は、対症療法のみとなります。
感染経路に関しても、確立された知見は得られていませんが、マダニに咬まれることによる感染の可能性が考えられることから、屋外で肌の露出を少なくしたり忌避剤を使用したりするなど、マダニに咬まれないようにすることが重要です。
なお、オズウイルスを媒介すると考えられるマダニは、主に関東以西に分布しており、オズウイルスの感染歴があると考えられる野生動物が千葉県、岐阜県、三重県、和歌山県、山口県、大分県で確認されております。
- 県からのお願い -
○ 県民の皆様へ
1 マダニに咬まれないように注意しましょう
マダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。
草むらや藪などに入る場合には、長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する)、足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を少なくすることが大事です。
服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)がお薦めです。
ディート(DEET)やイカリジン(ピカリジン)等を含む忌避剤の併用も効果が期待されます。
2 マダニに咬まれた場合
マダニに咬まれていることに気が付いた場合、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりするおそれがあるので、医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。また、マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合は医療機関で診察を受けてください。
オズウイルス感染症とは
掲載日:2023 年 6 月 23 日
オズウイルス(Oz virus, OZV)は、オルソミクソウイルス科 (Family
Orthomyxoviridae) トゴトウイルス属 (GenusThogotovirus) に分類される RNA ウイルスである。2018 年に本邦でタカサゴキララマダニ (Amblyomma testudinarium)より分離同定され、オズウイルスと命名された。これまで国内のヒトにおける血清を用いた抗体検査の結果により、ヒトにおける感染の可能性が示唆されていたものの、世界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていなかった。2023 年 6 月、ヒト感染症例(致死症例)が本邦から世界で初めて報告された(IASR 速報)。
病原体
OZV はオルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属する、6 分節の一本鎖マイナス鎖 RNA をゲノムとしてもつエンベロープウイルスで、2013 年に愛媛県で採取されたタカサゴキララマダニから、2018 年に初めて分離された(Ejiri H, et al., 2018)。本邦以外から同ウイルスが検出されたという報告はない。
図 1. オズウイルス粒子の電子顕微鏡写真
分布
タカサゴキララマダニは、主として関東以西に広く分布している。野生動物の血清抗体調査によれば、OZV の
感染歴があると考えられる野生動物(ニホンザル (
Macaca fuscata)、二ホンイノシシ(
Sus scrofa leucomystax)、
二ホンジカ(
Cervus nippon))が千葉県、岐阜県、三重県、和歌山県、山口県、大分県で確認されている(Tran
NTB,
et al., 2022)。ヒトでは、2013〜2019 年に得られた山口県の狩猟者の血清を用いた抗体検査の結果、24
名中 2 名で抗 OZV 抗体が陽性だったという報告がある(Tran NTB,
et al., 2022)。これらの結果は、OZV が日本
の広い地域に分布している可能性を示唆している。
臨床症状
OZV 感染による症例報告は本邦における 1 例のみ(IASR 速報)であり、OZV 感染による臨床症状を特徴づけ
ることはできない。当該症例は、倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛、39 度の発熱を主訴とし、心筋炎で死亡した。
死後、検査結果と病理組織所見よりウイルス性心筋炎と判明した。
なお、上記のように、血清抗体調査により過去の感染が示唆された事例の報告があり、感染が必ずしも致死的
な経過につながるわけではないと考えられるが、臨床症状の特徴の解明のためにはさらなる症例の情報の集
積が必要である。
感染経路
OZV はヒトを刺咬するマダニで検出されており、本邦における 1 例(IASR 速報)でも、飽血に近い状態のマダニ
の咬着が確認されていることから、感染マダニの刺咬により感染する可能性は考えられるが、確たる証拠は得
られていない。ヒト感染症例は 2023 年 6 月の報告(IASR 速報)に限られており、当該症例の感染経路につい
て結論は得られていない。
病原体診断
血液等からのウイルスの分離・同定及び RT-PCR 法によるウイルス遺伝子の検出により病原体診断が可能で
ある(Ejiri H, et al., 2018)。また、ペア血清による抗体検査も可能である。いずれの検査も国立感染症研究所
で実施可能である。
治療
現時点では有効な治療薬に関する知見はなく、対症療法のみとなる。
予防
感染経路に関する決定的な証拠はないが、マダニに刺されることによる感染の可能性が考えられることから、
屋外で肌の露出を少なくしたり忌避剤を使用したりするなどして、マダニに刺されないようにする。ワクチンはな
い。
参考資料
1. Ejiri H,
et al. 2018. Characterization of a Novel Thogotovirus Isolated from
Amblyomma Testudinarium
Ticks in Ehime, Japan: A Significant Phylogenetic Relationship to Bourbon Virus. Virus Research 249
(April): 57–65.
2. Tran NTB,
et al. 2022. Zoonotic Infection with OZ virus, a Novel Thogotovirus.
Emerging Infectious
Diseases 28 (2): 436–39.
©National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan, 2023.
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本文書では、国内外の保健機関や研究機関が発表した公式文書に基づいた情報が記載されています。その
ため、報道機関向け会見等での発表情報は含まれていません。
国内外の保健機関や研究者が調査中のため、本文書の公開日から情報が大きく更新されている可能性があり
ます。最新の情報をご確認ください。
オズウイルス感染症に関する Q&A
2023 年 6 月 23 日
国立感染症研究所
<一般の方向け>
問 1. オズウイルスとはなんですか。感染するとどのような病気になりますか?
答 1. 2018 年に新たに分離・同定されたウイルスです。感染した場合、どのような症状がでる
かについてはまだ詳しいことはわかっていません。研究によると、本ウイルスに過去に感染し
たことを示す抗体を持っているヒトもいることがわかっているので、感染に気づかないもしく
は軽症な場合もあると考えられます。
問 2. オズウイルス感染症は世界のどこで発生していますか?
答 2. これまで世界でオズウイルス感染症を発症した報告はなく、本邦で 2023 年 6 月に報
告された 2022 年に発症した症例が初めての報告です(IASR 速報)。
問 3. オズウイルスにはどのようにして感染するのですか?
答 3. オズウイルスは国内のマダニから見つかっているので、ウイルスを保有しているマダニに
刺されることにより感染する可能性が考えられますが、感染ルートに関する十分な知見はまだ
得られていません。
問 4. マダニは、屋内にいるダニとは違うのですか?
答 4. マダニと、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内
に生息するダニとでは種類が異なります。マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型(吸血
前 3~4mm)のダニで、主に森林や草地等の屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。
日本でも全国的に分布しています。
©National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan, 2023.
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問 5.どのようなマダニがオズウイルスを保有しているのですか?
答 5. 国内では、これまでタカサゴキララマダニというマダニからウイルスが見つかっています。
問 6. オズウイルス感染症にかからないために、どのように予防すればよいですか?
答 6. 現時点では、感染経路は不明ですが、ウイルスを持ったマダニに刺されることにより感
染する可能性が考えられることから、マダニに刺されないようにすることが重要です。特にマ
ダニの活動が盛んな春から秋にかけては注意してください。オズウイルス感染症だけではな
く、国内で毎年多くの報告例がある、つつが虫病や日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群
(SFTS)など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。草むらや藪など、マダニ
が多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出
を少なくすることが大事です。DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫除け剤の中
には肌に直接塗布するものや、服の上から用いるものがあり、補助的な効果があると言われて
います。また、屋外活動後はマダニに刺咬されていないか確認して下さい(参考ウェブサイト:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html)。
吸血中のマダニに気が付いた際は、無理に引き抜こうとせずに、医療機関(皮膚科など)で処
置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。また、マダニに刺された後、数週間程度
は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合はすみやかに医療機関で診察を受
けて下さい。 その際、マダニに刺されたことを医師に説明して下さい。
問 7. 国内で患者が報告された地域は特に感染のリスクが高いのですか?
答 7. 現時点では、詳細な感染経路は不明ですが、オズウイルスを媒介すると考えられるマダ
ニは主に関東以西の全国に分布しており、今回患者が報告された地域以外のマダニからオズ
ウイルスが検出されたことが報告されています。また、野生動物の血清抗体調査で今回患者が
報告された地域以外からオズウイルスの感染歴があると考えられる野生動物が確認されてい
ることから、今回患者が報告された地域が他の地域と比較して感染のリスクが高いというわけ
ではありません。
問 8. 動物はマダニに刺されてオズウイルスに感染するのですか?
答 8. 一般に、マダニは野外でヒトを含む多くの種類の動物を吸血することが知られています。
国内の野生動物(サル、イノシシ、シカ)を調査したところ、オズウイルスへの感染が示唆される
動物もいることがわかっています。
©National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan, 2023.
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<医療従事者等の専門家向け>
問 1. オズウイルスはどのようなウイルスですか?
答 1. オズウイルスは、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属する、6 分節一本鎖マイナ
ス鎖 RNA を有するエンベロープウイルスです。オルソミクソウイルス科のウイルスは酸や熱に
弱く、消毒用アルコールなどで急速に失活します。
問 2. 潜伏期間はどのくらいですか?どのような症状が出ますか?
答 2. ヒトにおける感染症例の報告は 1 例のみであり、潜伏期間や特徴的な症状はまだわか
っていません。症例の詳細は IASR の報告をご覧ください(IASR 速報)。
問 3. 検査所見の特徴はどのようなものですか?
答 3. ヒトにおける感染症例の報告は 1 例のみであり、一般的なことはまだわかっていません。
症例の詳細は IASR の報告をご覧ください(IASR 速報)。
問 4. どのようにして診断すればよいですか?
答 4. 感染経路について現時点で確立された知見はありませんが、マダニに刺された後に、原
因不明の発熱等体調不良が生じた時に鑑別疾患の一つとして挙げることが考えられます。ま
た、IASR に報告された 1 例ではウイルス性心筋炎がみられましたが、特徴的な症状や心筋炎
の発生頻度などはわかっていません。確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。な
お、患者がマダニに刺されたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりす
る場合も考えられます。
問 5. 治療方法はありますか?
答 5. 現時点では有効な治療薬に関する知見はなく、対症療法のみとなります。
問 6. 患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は何ですか?
答 6. 患者の血液や体液にはウイルスが存在する可能性があるため、標準予防策を遵守する
ことが重要です。
問 7. 検査方法等、技術的な内容の相談窓口を教えてください。
答 7. 国立感染症研究所感染病理部 pathology[アットマーク]nih.go.jp にお問い合わせく
ださい。
*[アットマーク]を@に置き換えて送信してください。