【広報】
報道関係各位 2023 年 6 月 30 日
山階鳥類研究所
沖縄で繁殖し、オーストラリアとの間を渡りする
ベニアジサシ(絶滅危惧種)が、ノラネコに捕食されました
https://www.yamashina.or.jp/hp/p_release/images/20230630_prelease.pdf
沖縄で繁殖し、オーストラリアとの間を渡りするベニアジサシ(絶滅危惧種)が、
ノラネコに捕食されました。
オーストラリアから渡来して沖縄周辺で繁殖する海鳥のベニアジサシ(環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類)が、ノラネコによって捕食されている様子が、撮影されました。
・6 月 22 日沖縄県うるま市勝連半島の漁港で、ノラネコが防波堤にとまって休むベニアジサシを捕獲(少なくとも 2 羽)し、口にくわえて運ぶところが観察されました。
・これまでもノラネコによってヤンバルクイナが捕食されることはわかっていましたが、ベニアジサシでは初めてです。
・ベニアジサシの繁殖数は近年減少傾向にあり、影響が心配されます。
・この個体には鳥類標識調査(注)の金属足環が付いていたため回収して調べたところ、約 6,000km南のオーストラリア・クイーンズランド州・スウェイン環礁で、2002 年 1 月 12 日に標識されたもので、21 歳以上であることも判明しました
オーストラリアでこの個体に足環を付けた研究者(ポール・オニールさん)のコメント:
私たちは、2002 年 1 月 12 日にスウェイン礁(グレートバリアリーフ海洋公園)で足環を付けました。オーストラリアと沖縄との間の長距離往復飛行に何度も成功したのに、ネコに捕食されるという非常に悲しい結末。 たくさんの子孫を残してくれていたらいいですね!ベニアジサシはオーストラリアでは主にネコのいない遠隔島にしか生息していないため、こちらにいる間はネコから安全であるようです。 ただしオーストラリアの他の鳥類や哺乳類の種について、その多くは主にネコの捕食によって急速に絶滅に向かっています。
ベニアジサシとは:ヨーロッパやアフリカ、北アメリカなどに生息する海鳥。日本では主に沖縄島周辺で繁殖し、オーストラリア東部で越冬することが鳥類標識調査(注)で判明している。沖縄周辺の個体数は、2021年の環境省調査では約 1,500 羽であったが、調査年による増減が見られる。同年の巣数は約 500 巣と 2009 年以降減少を続けていて、2009 年に比べると 68.7%減少した(生物多様性センター2021、モニタリングサイト 1000 島嶼海鳥調査報告書)。
ネコの捕食による鳥類への影響:
ノネコやノラネコが野生鳥類を捕食することによる影響は、世界中で懸念されている。日本では伊豆諸島御蔵島のオオミズナギドリ(海鳥、準絶滅危惧種)の繁殖地で、1970 年代後半には 175 万~350 万羽いたものが、近年 10 万羽程度に激減したことの一因がネコであると考えられている。ネコ 1 匹あたり平均で年間に 313 羽のオオミズナギドリを捕食するとの推定がある(Azumi他2020)。
https://link.springer.com/article/10.1007/s13364-020-00544-5
(注)鳥類標識調査とは:鳥類を捕獲し、個体識別用の足環を装着して放鳥する生態調査。鳥類の国内外の渡りや寿命などの生態を明らかにする目的で実施されている。近年は、鳥類生息状況のモニタリングのためにも活用されている。日本では環境省の委託事業として、山階鳥類研究所が、多くのボランティアの協力とともに実施している。 同研究所には 1961 年以来足環を装着して放鳥した約 600 万羽 のデータが蓄積されている。
この件に関する問い合わせ先:
写真のデジタルデータ、またノラネコが捕獲しようとする際の動画もありますので、
ご希望の方はお問い合わせください。
公益財団法人 山階鳥類研究所副所長 尾崎清明
e メール:ozaki(アットマーク)yamashina.or.jp
Tel: 04-7182-1101
研究員 富田直樹
e メール:tomita(アットマーク)yamashina.or.jp
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【報道】ノラネコ、絶滅危惧種を10分で食べ終える 防波堤に並ぶベニアジサシ狩る うるま市の漁港 「屋外ネコ減を」専門家が警鐘
沖縄タイムス 2023年6月28日 8:00
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1177328
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba82cebe10b471c83047459165b7a97ec3510161
(概要)
うるま市の漁港で22日、飛来した絶滅危惧2類のベニアジサシをノラネコが捕食する様子を漁師の男性が発見して撮影した。ノラネコはベニアジサシを捕まえると10分もかからずに食べ終え、次の獲物を狙ったという。専門家は「屋外で生息するネコを減らす必要がある」と警鐘を鳴らしている。
県は家畜への伝染病感染、不妊去勢手術が済んでいない個体の妊娠リスクの防止のため、ネコの完全室内飼育を呼びかけている。またヤンバルクイナなど希少野生動物を捕食しているとして、世界自然遺産のやんばる3村で屋外にいるネコをゼロにする計画の作成も進めている。
どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長は「人間に餌をもらいキャットフードを食べ慣れたネコでも、高い狩猟能力は衰えない」と指摘する。ヘビやカエルの捕食による寄生虫の感染や交通事故に遭うリスクもあり、「ネコを危険から守るためにも、屋外ネコを減らすべきだ」と強調。屋外ネコを増やさないため、「県だけでなく各市町村など地域でのルール作りも求められる」と述べた。
(詳細はURLを見てください)
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【報道】沖縄でネコに食べられたベニアジサシは「長寿」の21歳 オーストラリアから来た絶滅危惧種の鳥だった
配信 (社会部・普久原茜、政経部・東江郁香)
https://news.yahoo.co.jp/articles/95f59629987142bac0d86e298cb51c621fb5733d
(記事概要とコメント)
捕食されたベニアジサシの足輪を研究所が回収し調査したところ、オーストラリアのスウェイン環礁で2002年1月12日に付けられ、この個体は21歳以上だった。
環境省の調査によると、2021年に沖縄島周辺で確認されたベニアジサシの巣の数は、2009年と比較して68・7%減少している。
「琉球わんにゃんゆいまーる」の畑井モト子代表理事は「外にいるネコも命ある存在とし、これ以上増やさないように不妊去勢手術をし、マナーを守った餌やりなどの管理が必要。飼い猫の適正飼養を徹底して」と訴えたという。
以上です.